2023年M-1感想②

つづき。

 

7 真空ジェシカ

3年連続出場、松本人志にも今回は「笑いって距離感だと思うんですよね。今回の真空ジェシカは個人的には距離感良かったと思ったんだけどなぁ~」みたいなこと言われてて、芸風とかという意味では無くM-1での立ち位置的に「令和の笑い飯」になっている真空ジェシカ。彼らについては、2022年の決勝ネタは全然覚えていないんだけど予選の時に既に貫禄があって「やべー…こいつら一回M-1決勝でて知名度も出てきたし、優勝しちゃうんじゃないか…?」とすら思ったのですが、まぁ上手くはいかんもんですね。で、私の印象は2021年の時と近くて、面白いんだけどいつもこの人達の漫才って「一問一答」に見えてしまうんだよな、ということ。たまに聞く(漫才を評するうえで)「大喜利」ってやつですね。まぁ漫才なんて全てひとつボケたらひとつツッコむ、という一問一答なんでしょうけど、、、ってアレか。この問題と真空ジェシカの漫才が「大喜利」なのはちょっと問題違うか?いや同じか?まぁ今回は「Z画館ってどんな客層?」大喜利ってことですね。川北が何役もするからぶつ切りぶつ切りの印象になるのかなぁ?ストーリーが無い…ってわけでもないしな。ううむ。私的90点。やはり一個一個のボケの吟味感というか何度も見たくなる点では2021年、最初の年のネタのほうが好きかな。

ちなみに、今回志らく師匠が審査員をお辞めになりましたが、志らく師匠は(ランジャタイやトムブラウンへの高評価が有名ですが)真空ジェシカも2021年のとき高く評価しておりまして(以下youtubeなどでも)。

志らくの芸談「真空ジェシカ&オズワルド」 - YouTube

んで、今回、

「私が審査員をしていたら真空ジェシカには高得点をつけているから間違いなくファイナルに進めた。でも令和ロマンは松本さんと同じくらいの得点だから今度は令和ロマンがファイナルには進めなかった。つまり決勝のあの面白いネタを聞けなかったことになる。つくづく審査員って怖い仕事だ。令和ロマンにとっては私が審査員でなくてよかったし、真空ジェシカ志らくが審査員だったら優勝してたかもしれない。」とツイートしていて(本文はこちら)、面白いなと思ったし、令和ロマンくるまが優勝できたのは完全に運というのも、謙遜とか若いキャリアで獲ってしまった複雑な気持ちとかあるんだろうけど運や巡り合わせあるよなーと。

ちなみに、僕はさや香の見せ算のネタの存在は知らなかったが「からあげ」のネタは知っているのと、そもそも彼らは終盤でいつのまにかボケとツッコミが入れ替わる(ブラマヨぽくなるといえば王道風に聞こえるけども)ので王道漫才師だとは思ってなくて(何を王道とするかはムズいしここでは定義などしない)(2021年で、キュウやダイヤモンドのようなダウンビートみたいな人達が多めの大会で「ザ・M-1」みたいなネタでハネたのでその印象が強い、のはわかるが)、真空ジェシカは異端扱いされるけど平場がめちゃくちゃなのと若い人向けのワードチョイスが「新しい」だけで基本的には王道コント漫才だと思っている(コント漫才自体が王道ではない、王道とはしゃべくりだ、という意見はここでは置く。コント漫才は多くの漫才師が採用する王道パターンであるという認識をしています)。ネタ前の煽りVでも「もはや王道」と言われていたのに同意です。

 

8 ダンビラムーチョ

ニューヨークの後輩として知っていたし、2022だっけ?敗者復活で変な笛を吹き出すネタは知っていた。山梨仕事で稼いでるのも知ってる。まぁ、私はいつぞやの松本人志じゃないが「笛を持ち込むのは漫才じゃないだろ…」とか思っちゃったけど。じゃあ、すゑひろがりずはって?あれはね…。定義むずかしいよね~。

この人達は飛び道具なので、と思っていたし、歌ネタばっかりやろ?とも思ってたのでまぁこんなもんよな…。ニューヨークも、最初M-1決勝出た時ですが、ライブではウケまくっているだろう歌ネタを決勝でやったら「らしくない」みたいな空気で全然ダメだったもんね。俺もその時ニューヨークを初めて知ったくらいだから「M-1で歌ネタやったらそらそんなにハネないだろ、何でそれがわからんのや…」と思ってました。でもね、おいでやすこがだって歌ネタじゃないですかあれ?あれは準優勝しましたよ?っていう。難しい!M-1難しすぎ!

最初のボケまで長いって言われてたけど、あの長さが面白いんじゃんね!でも4分で笑いを沢山取らなきゃならないとしたら不利か…。まぁ、私が言えることはダンビラは飛び道具なんだからいいじゃん、これで名が売れてTV出て売れてくれ!こないだ見た相席食堂のロケ個人的にはダンビラが一番面白かったかも!ということと、点数がそこまでだったのは審査員があんまり「天体観測」を(細部まで)知らないからだと思う。天体観測の演奏ってマジであんなんだから。とはいえ私的88点。

 

9 くらげ

くらげは2022年の予選の時点でムチャクチャ好きだった。名前だけはニューヨークのyoutubeの「東京吉本若手ゴシップ大会」という動画で、ネタ盗作騒動みたいな話で知っていた(同期のオズワルドが擁護しており、決して盗作したわけではないとのこと)。2022年は、シンクロニシティ・ダイヤモンド・くらげが凄く好きだったがくらげだけ準々決勝で落とされてたはず。彼らはいわばシステム屋で、毎度毎度違うシステムを構築してきてて好きだ。多分2022年は上手さと言うか、漫才の流暢さみたいなところが足りなくて落とされてしまったのではないかと勝手に思っている(結局上手さって大事なんだよな)。前回は固さみたいなものがあったというか。でも今回は決勝!お笑いを好きになって日が浅いが私の目に狂いは無かった…。

で、でもね~~~ちょっと想像はしてたけどダイヤモンドパターンね…。これは一生言い続けるけど2022年のダイヤモンドはむちゃくちゃ面白かったですからね。予選でも同じネタでウケて勝ち上がってきてるし、決勝本番ではあんまウケてないけど何度見ても面白いんだよなぁ。

まぁでも、今回のくらげは予選の方が面白いネタだったような気がしたな。一本調子になってしまっているというか。場の空気にハマればすげぇハネるんだろうけどなぁ。私的90点。今後、システム屋的な所がもっと知られてほしい。

 

10 モグライダー

みんなの期待が高すぎたんじゃない?彼らはもう手の内バレてるから、そもそも、俺は予選の動画だとみんなが分かっているから厳しいんじゃないか~~とか思ってて。でも決勝まで上がってきてるの割と不思議だったんだけども。で、ここまでキャラバレしてる中でよくここまで面白くできたなぁ~~~と、俺は高評価ですよ。M-1て「その日一番面白いヤツが優勝」という大会だから、別にいいけどさ、「客のウケの量」を一番に見る(審査の最大の基準にする)んなら芸人審査員いらなくない?という意見もなんかわかる気がしてきましたよ。THE SECONDの高度な客投票システムかなり精度が高かったからアレでいい。今回のモグライダーは「ともしげがうまくいきすぎた」ということでそんなに点が上がらなかったんでしょうけど、2021とは違う味を見せつつモグライダーって感じで僕は93点つけました。

 

☆最終決戦について

私はヤーレンズと僅差ですが令和ロマン優勝で文句なしです。最初のボケ(工場の単純作業~的な)のと終盤の「吉本にはこういう人がいます」が決まり手かな。大変なことが起きたぞ…(トップバッター優勝、芸歴浅いのに優勝等)と思ったのは皆が皆思ったことなので割愛。ヤーレンズの2本目は2022年敗者復活でもかけたラーメン屋のネタを改良したもので(前述のように大好きなのでキタ!!!と思った)、でも7割くらいは同じだったと思う。何度も見たくなる最高のネタだ。令ロの2本目も昔作ったネタらしいので、結局過去にかけて通用しなかったネタでも、M-1ってのはその日の空気にバチッとハマればいい、ウケりゃ勝ちってことね。漫才って難しいですね。それこそ令ロは1本目はトップバッター用だと思って持っていった会場を温めそうなネタで、2本目は寄席用のとにかく客ウケするネタで。結局プロ審査員対策よりも客に当てたほうが勝つ。そういうことかよ!!KOCとはまた違う傾向かもね。まぁその辺はいいや…。さや香「見せ算」に関しても特に目新しい視点などございません。「選択ミス」ではなく、1年間計画していた「強い意思による実行」だったとのことで、それならば素人の我々が何も言うことなどござーせん。その攻めの姿勢にあっぱれという所でしょう。というより私としては、ブラマヨ的掛け合いの後継者として2人の掛け合いが見たいのに、新山が暴走して石井がただ困り続ける、みたいな形に見えてしまったのがマイナスだったんじゃないかなと。志らく師匠が勇退しなければ、又はさや香新山がどこかの地点で正気になって「M-1決勝で見せ算は違くね?」て思っていたら(多分さや香勝ちきったでしょ)令和ロマンの優勝は無かった。アナザーアナザーストーリーかなんかでの石井の「でも、これがさや香やし」が何ともいえず、クる。でも今ライブで見せ算とからあげでバッコバッコウケてるらしいじゃん?よかったね。

 

素人目だと、さや香1本目と令ロ2本目以外で爆発らしい爆発が無かった気がした(爆発が無かったので、M-1を研究しまくった分析屋のくるまが勝った、という解釈をしています。)けど、何となく俺がお笑いを好きになり始めたあたりの2020年M-1に近い雰囲気だったような(僅差でマジラヴが勝った年。決定打に欠けた年だった気が)。でもそういう年ほど楽しめたりもすんだよな。ありがとう芸人さんたち!あ~あと令ロくるまが来年もM-1出ます!はマジで「まだ芸歴的に挑戦者やってたかった」「(未だお笑いオタクなので)憧れている先輩やレジェンド達と同格になったとはどうしても思えない」という意識からだと思う。(スター街道をゆく霜降り明星、東京進出せず大阪で漫才に打ち込むミルクボーイと対比して)自分たちにあるのは「闘い続ける」チャンピョン像なのではないか、みたいなことをインタビューで言ってて、なるほどなと思った。がんばれ!俺の中ではずっとくるまは屋敷リスペクトのニューヨークの後輩なんだけど、もう違うんだよな。すげーよ!