っぽさの話

先日知り合いのバンドマンと「ART-SCHOOLっぽい曲って作れそうで作れない」「歌詞やコード進行を真似てもそれっぽさが出ない」といった話をした。俺は丁度Syrup16gストレイテナーっぽい曲をどうにかして作りたいと思っていたところだった。

 

「別に俺らは木下理樹でも五十嵐隆でもないんだから真似なくていいじゃん」というのはバンドをやる際に前提としてあるし、木下理樹の真似しても「劣化木下理樹」になるだけ、本当になりたいなら木下理樹が影響を受けている海外のオルタナやインディー、もしくは元ネタの映画や文学に当たるべきだと昔から考えているので(これはその目標になる対象がミスチルだろうがミッシェルガンエレファントだろうが同じで、すべてに言えること)別に真似する必要はないんだけど、一つの実験というか修行というか考察として、そういうことにチャレンジするのも面白いな、くらいの話です。
ちなみに俺は、憧れの対象のルーツに当たりまくった結果それとは全く別の仕上がりになりました、くらいが一番いいとすら考えている。俺がなりたかったものは木下理樹五十嵐隆後藤正文そのものではなく、「そういうような存在」になりたかっただけだからだ(だからこそART/syrup/初期バンプチルドレンの若手バンドには厳しく接している?のだが最近は初期indigo la Endみたいなのアリになって来ました)


結局、「そのバンドっぽい曲」っとは、「そのバンドの曲のどこかをパクっている曲」だ。
だがそのままパクるとただのパクリ、もはやカバーと変わらないじゃん、というレベルになってしまうので塩梅がめちゃムズい。
ART-SCHOOLパクリ界隈(そんな界隈は無い)でスター・バンドと言えるTenkiameは(知らない方はググって下さい)ART-SCHOOLを徹底的に再編集することでそれっぽさを出していて、サンプリングの量と見せ方が見事だった。
例えば「スカーレット」1曲からパクッたらスカーレットのなりそこないみたいな平凡なロキノン疾走曲が出来がちだが、イントロは「バタフライキス」っぽく、ギターのオブリは「Forget the swan」から拝借し、Aメロは「Fade to Black」のサビに似ているがサビは「Swan Song」のAメロだ、みたいな(もちろんあくまで例だ)ことをすれば、一聴しただけでは(情報量が多いので)「アートスクールの特徴を備えた、それっぽい曲」が出来るという寸法だ。

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また、自分の聴き方というのも大事になってくる。つまり、自分にとって「ART-SCHOOLっぽさ」「syrupっぽさ」とは何なのか?
歌詞さえ似ていればそう思うのか、メロディなのか、歌い方なのか、声なのか、サウンドなのか。
syrup16gっぽさとはまずあのカポと解放弦を使ったコード感なのだ、とかね。ツイッター相互フォロワーの方がSTOMP TALK MODSTONEを、syrupに対するオマージュが凄くて良い的なことをおっしゃっていたけれどやっぱ五十嵐の声じゃないとあの感じが出ないのでは?という内容のことも言っていて(無断でブログ書いてすんません)、なかなかむずかしいネって話です(STOMP TALK MODSTONEはライブ見たことあるし音源もそのとき買いましたがめちゃ良いバンドです)。

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(この曲はアートのLOVERSぽいけど……)


ビートルズの全曲をAIに聴かせて新曲を造らせた、という話をフルカワユタカのネットラジオで聞いた気がするが、やはり、「どこからどうみてもビートルズ」なのだけど
ビートルズが解散せずに活動していれば作っただろう曲」ではないよね、という話をしていて興味深かった。
ただ僕らの場合はこの「AI」がやったようなことがやりたいんだけどもという話。

かつてサンボマスターがとあるB面曲を演奏する際に「奥田民生と見紛う曲!」と言ったんだけども、それで「ああ確かに言われてみれば…」
となったし、それを奥田民夫と一緒に歌う映像もあった。余談も余談だが。

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(「僕に捧ぐ」という曲だった)

 

しかしそういうことを考えると、「とあるアーティストの曲を自分風にして演奏する」といえる「トリビュート企画」も、この考察(?)の助けになるのかもしれない。僕が感嘆したトリビュートはHUSKING BEEと最近出た(最近でもないか)ストレイテナーのなのだが、多くのバンドがまるで自分たちの曲のように解釈しているのが面白かった。ブラフマンこれ完全にブラフマンじゃん!とか、バックナンバーのシーグラスめっちゃこの人達っぽいな!みたいな。

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で、最近the band apartのトリビュートが出て、僕はまだトレイラーしか見てないけれど英語詞の曲は正直「バンアパのなりそこない」みたいな印象ばかりで(テナーは良さげだった)、まぁそのトレイラーも何度も見ると慣れてきてみんな良いな、みたいにはなるんだけども、the band apartに影響を与えた側であるLOW IQ 01FRONTIER BACKYARDASPARAGUSが逆にピンと来ないというか彼ら自体が近い音楽性過ぎて結果「バンアパ風のバンド」になっているのは(もう失礼極まりない話だけど)モヤモヤしてしまった。まぁ、LOW IQ 01FRONTIER BACKYARDASPARAGUS周辺のバンドの集大成&一つの完成系がバンアパなのであるという証明でもある(この辺のシーン、詳しくないけど俺は基本的に好感を持っているのでよくツイッターで話題にするのだが思った以上に受けが悪いの、いつも悲しくなっています!)。

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知り合いがブッチャーズトリビュート聴いたけどやっぱり吉村さんの歌じゃないとあの感じは出ない、吉村さんは歌が上手かったわけじゃないけど、だからこそあの感じが他の人には出ない的なことを言っていて確かに…、と思ったし、ネットでエレカシのトリビュートに対して文句を言ってた人を見たことあるけどそれもそういうことなのだろう。
トリビュート向きなバンドとそうでないバンドがいる気はする。ストレイテナーはいろんなジャンルの曲があるので、いろんなバンドが料理(アレンジ・解釈)しやすいような気がした。

 

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ちなみに私はARTとsyrup好きではあるがアジカン狂でもあるので、アジカンっぽいバンドって実はあまりいないよなって考えている。そんなこと言ったらストレイテナーっぽいバンドもフジファブリックっぽいバンドも居ねぇよ!とはなるが。ニコタッチはグレイプバインを意識してたみたいで田中和将も対談で割と認めてた記憶が…。

アジカンのあの「四つ打ち」や「オクターブ奏法」の使い方はめちゃ模倣されて、どことなく表面的にアジカンの影響(抽象的な歌詞とかも含めて)は後進バンドにあるんだけど。パワーポップ/四つ打ち/オクターブ奏法/オリエンタルなリフ/みたいな方法論だけを完全に受け継いだのはKANA-BOONだけど、アジカンってまずあの歌詞の思想性が素晴らしいとかメロが素晴らしいとか、いろんな洋楽に影響を受けているはずなのにああなっちゃう、インプットとアウトプットのちぐはぐな感じとかが絶妙に萌えるんじゃんね、とかアジカン狂としては考えてしまう。アジカン初期はウィーザーフォロワーがイースタンユースを演奏した、だしオリエンタルなリフはナンバーガール由来だし彼ら自体がジェネリックなんだよなっていう。そんなんアートもテナーもそうだけども。あと後藤の歌い方は奥田民夫なんですよねあれ。

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(これは妙に歌メロとかアジカンぽかったですね)